11.匂い
となりに居たはずのあなたは
午後16時、目を覚ますといなかった
「バイトだから帰るね。飲みすぎ注意!」
メモだけ残して貸した服は綺麗にたたまれていた
枕元は少しいい匂いがしてこのまま眠りに着きたいと思ってしまうほどだった
君の残り香をまとったまま原付にまたがり風で消えていくのが嫌で歩いて出勤したよ
タバコの匂いでかき消されてしまったけどね
付き合ってるわけじゃないしそういう関係でもない
別に好きでもないし付き合いたいわけでもない
でも君の匂いが好きだから隣にいてほしい
それだけ
それだけなんだ
今にも泣き出しそうな空はまるで僕の気持ちを表してるようで
先に僕が泣き出してしまったよ
君は泣かなかったね
ごめんね。
ごめんね。